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タマユラミライ 感想&レビュー動画
概要
2019年に「Azurite」より発売されたゲーム。
同年の萌えゲーアワードで準大賞と、金賞・シナリオ賞を獲得した作品。
人ならざる存在「妖異」が人間に溶け込んで暮らす街「深野」で綴られる、魔法使いの物語。古風な雰囲気漂う世界観と、ままならなくも見てみぬふりはできない切ない心模様が描かれるアドベンチャーです。
評価
- ストーリー : 8.5点
- ワードセンス : 8点
- キャラクター : 7.5点
- エロ&グラフィック : 7.5点
- その他 : 5点
総合評価:36.5点(50点満点)
あらすじ
深い緑に囲まれた辺境の町、深野市。
主人公である「夜羽睦季」は”魔法使い”として、学生の傍ら魔法の研究に勤しむ生活をおくっていた。
魔法使いといってもハリーポッターみたいに、バンバン不思議現象を起こす超人とかではなく、その地に住まう人ならざる存在「妖異」たちのもめごとを和平的に仲裁するという、お奉行さんのような役目のことを指します。
日々不思議な事件に追われつつも、何とか周囲の助けを借りながら解決していたが、ある日極めて強い霊力を持つ少女「神掛 由岐奈」が転校してきたことから、自身が過去に背負った業と誓いが掘り起こされていく・・・みたいな話です。
人ならざる妖異と人外れた存在たる魔法使いが織りなす、和風ミステリアスアドベンチャーってとこですね。
キャラクター紹介
神掛 由岐奈
「オツキサマ」と呼ばれる落とし物を探すために、最近町から転校してきた少女。
生まれながらにして妖異を視認できる「鬼見」の力と、けた外れの霊力をもっており魔法使いとしての適性高し。
その異質性ゆえに一般社会に馴染めず疎外されてきた過去もあって、他人を寄せ付けない刺々しい雰囲気をまとっています。
「言葉を覚えたてのセキセイインコじゃないんだから」みたいな、独特な言い回しで身の回りに起きることを常に例えで表現する癖があるのが特徴です。・・・芸人?
性格的には強気で意地っ張り気味のツンデレタイプ。エロス耐性は皆無なためそっち方面で攻めらるとたじたじ。
個別ルートは物語の核心に踏み込む話で、センターの的な立場だけに各種の設定やキャラ付けが練りこまれているように感じました。
とくに告白シーンはめっちゃ良くて、強く印象に残っています。
水晶石 みだり
見た目の年齢には似つかわしくない、特濃の色香を放ち続ける上級生。
その正体は純潔なる淫魔(サキュバス)。
ただ夜の眷属の血統にもかかわらず極度の奥手であり男性恐怖症という、存在としての矛盾を抱えており、ゆえに故郷から追放されてしまったところを主人公に救われ、それ以降「先生」として多分なる信頼を寄せて秘書のような立場で身を置いています。
口癖は「いけない方なんですから」。
サキュバスっていうとぶっ飛び痴女か、おぼこな生娘かって両極が多い気がしますが、本作では後者の清楚パターンですね。
他ヒロインがけっこう変化球ぎみなこともあってか、妖異ながらストレートに清楚なお嬢様キャラでまとまってました。
猫天宮 花子
見た目こそロリっ子メイドだが、その正体は学校の女子トイレに住まう水の神の一柱。
神らしく些事には流されない淡々とした性格で、ひ弱な人間のこともやや見下してる感もあるものの、主人公のことはいろいろ気にかけていて、魔法使いとしての器量を試そうとしている節があります。
口癖は「天誅」。機嫌を損ねると使用済み女子トイレを掃除した熟成ブラシで顔面をごしごしされます。多くのユーザーにとってご褒美となるでしょう花子様。ありがたやありがたや
個別ルートでは妖異たる彼女が人の心を理解するために、奔走する話がテーマとなります。
小伯 白
主人公が「白ねえちゃん」と呼ぶ少女。
かなり度の強い方言をしゃべり、見た目こそ小柄だが驚きのグラマラス体系。
主人公のことは大事な弟のように思っていて、何かと気にかけています。
口癖は「もー、むっくん(主人公)お姉ちゃんのこと好きすぎるべよー」
見た目は小学生ですが、決してJSではありません。何でといえばそういう設定だからです。ゆえに合法です。
本作のキーパーソンであり、他のメインヒロイン3人をクリアすると現れるグランドエンディングルートを担います。
物悲しく思いが交錯する切なすぎるラストは必見。
総合レビュー
ストーリー 8.5点
本筋としては妖異が登場するミステリーで、人ならざる者の間で起こるトラブルを遠山の金さんがごとく解決してくのが筋になります。そのため恋愛色が強めの作品ではないですね。
もちろん萌えゲーとしてのいちゃいちゃなりサービスシーンは、しっかり備えていますが、それらを省いても十分に物語として面白さあり。
細田守映画とか好きだと気に入ると思います。
あと前半パートでの伏線の張り方が上手いですね。
たぶんこんな感じかなって予測した展開を、さらにもう一段大きくどんでん返ししてきて、私はすっかりミスリードされてしまいました。
この叙述トリックを味わえる萌えゲーはそこまで多くないんじゃないかなと。
各エピソードの結末があまりにご都合主義的だったりせず、やるせない思いがありながらも最善を選ぶと言った落としどころなのもいいですね。
ただみだりと花子のルートは物語の核となるトリックを使わないため、どうしても由岐奈と白のルートほどのドラマチックさがなく、キャラが性癖にささるかどうかで面白さが分かれてしまいそうな点は少し残念でしょうか。
まあでもストーリー重視の物語だと、基本マルチエンディングになる萌えゲーの構造上、各ヒロインのルートに強弱がつきやすいのはある程度致し方ないと思いますが。
ワードセンス 8点
文体としては主人公の性格もあってかなり柔らかめなのが特徴。
勢いまかせにボケたり超展開も少なく、安心感ある文章だと思います。
萌えゲーゆえにもちろん恋愛も描かれますが、それよりもさらに奥深い心の動きというか、非合理でも非常識でも無意味とわかっていてもままならざる心の行方を、妖異という人ではない、人のルールにしばられない存在通じて丹念に描いているのが非常に素晴らしかったです。
この心理描写が作品の一番の魅力なんじゃないでしょうか。
キャラクター 7.5点
メインヒロインは背負っている宿命に合わせて、4人ともかなりしっかり特徴づけされているように思いました。
あー、その設定ならこの性格になるかなあみたいな必然性も感じて、ストーリーとの噛みあってるかなと。
私的にお気に入りは白と対になるサブキャラの「小伯 紅」の描き方ですね。白ルートの感動をぐっと引き立たせていると思います。
グラフィック&エロス 7.5点
内容はわりとオーソドックスですが、可愛らしい絵柄に反して描写はけっこうねっとりしてる感があります。官能小説みたいな。
主人公が穏やかな性格もあって、なんていうのかむっつりっぽい感じ?
おとなしい顔してわりと絶倫ですこの主人公。
その他加点要素 5点
ほか良かった点としては音楽ですね。
ノスタルジックな雰囲気の世界観らしい、神秘的で切ないBGMが印象に残っています。聖剣伝説とかクロノトリガーとかを連想しました。
切なさあり、感動あり、そして最後にはほっこりした気持ちで終われる、気持ちの良い萌えゲーで多くの方にプレイしてほしいなって思います。
評価
- ストーリー : 8.5点
- ワードセンス : 8点
- キャラクター : 7.5点
- エロ&グラフィック : 7.5点
- その他 : 5点
総合評価:36.5点(50点満点)