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最終試験くじら 感想&レビュー動画
概要
2004年にD.C.シリーズなどで有名な「CIRCUS」より発売されたゲーム。
昔のゲームならではの幻想的で、夢と現実の狭間のような世界観が魅力の作品。主題歌の「ディアノイア」がとにかく素晴らしい。
あらすじ
久遠寺という旅一座の息子であり女形(おやま)をつとめている主人公の「久遠寺睦」は、仕事の関係でいつものように知らない街に訪れていた。
しかしどうもその街の様子はおかしい。
その筆頭が街を見下ろすように空に鎮座している「くじら」。
明らかに異様な風景だが当たり前になりすぎて、住人はとくに気にしていない模様。
この不思議な街で主人公は何に出会うのだろうか・・・って物語です。
日常ものに見えて実は壮大なカラクリのある世界で、ところどころに伏線が散りばめられているという点は、ほかの「Circus」や「key」シリーズにも通じるところがあるかもですね。
キャラクター紹介
夢前春香
主人公とは血の繋がっていない妹。
義妹ながら主人公との仲は良好で、旅一座のメンバーとして共に各地を転々としています。
例によって極度のブラコンで、ややヤンデレにも足を踏み入れていますが、ここまでピュアだとそう雑に切り捨てたくもないですね。
あと驚くと体からぬいぐるみを生成するという能力を持っています。
・・・むしろ空飛ぶクジラよりそっちの方がフィクションでは?「特異体質」としかゲーム内でも触れられないんで最後まで謎なんですが。
そんな事情もあってかちょっと人間不信なところがあって引きこもり気味で、学校にも通っておらず家業の手伝いをしています。
御影仁菜
自分の意志とは関係なしに「飛行」するという特異体質持ちの上級生。
しかし体が小さいうえにしゃべり方も幼いのであんまり年上感はなし。
なぜ空を飛ぶのか?それは特異体質だからです。以上。
料理研究部の部員であり、鯛とたい焼きを間違えて鍋に放り込む地獄の料理番長。
この引くほど料理下手って設定も一周回って最近あまり見ないですね。
はにゃーみたいな口癖と言い、舌っ足らずな話し方と言い、いま基準の目線でみるとちょっとあざとさが鼻につきますが、昔の萌えゲーってわりとこんな感じと言うか、少なくとも一枠はこういうキャラらがいたなあって思いますね。
その一方でエグイくらい暗黒の設定を抱えているキャラでもあります。私が過去にプレイした萌えゲーヒロインでも最高クラスかもしれません。
榛原胡桃
転校先で出会った同級生。
美少女ではあるんですが、ずけずけした物言いと心を見透かしてくるような観察眼。人をまるめこむようなちょっと小憎らしい言動が特徴です。
主人公とは転校先ですぐに仲良くなります。仲の良い女友達枠って感じでしょうか。
新聞部部長として常にスクープを追っているため良くも悪くも学園の有名人で、パパラッチばりに主人公にも絡んでくるちょっと迷惑系ヒロイン。
クジラの謎を暴くと言った父親が過去に失踪していることから、クジラに複雑な感情を持っており、個別ではクジラの調査に奮闘していくことが話の軸になります。
茂木優佳
茂木財閥と言う世界を牛耳る大企業の家の生まれ。
常におしとやかで上品なたたずまいを崩さない、絵に描いたようなお嬢様。
フィクションの世界だと逆にありふれてる設定ですな。ちょっと腹黒さが垣間見える点も教科書通りって感じです。
茂木美佳
優佳の双子の妹で姉とは異なり活発なバスケ部員。
またの名を歩くラッキースケベ先輩。
出会うたびに胸なり尻なりを偶然のハプニングで押し付けては、ブチぎれて殴りかかって来ます。通り魔かな?
ちなみにパンチ力は人にトリプルアクセルを強要させるほど。
くじらの少女
そして世界の鍵を握る少女。
詳細は謎に包まれている。
作品のポイント
①レトロでノスタルジックで複雑な世界観
2004年製作のゲームのため、まあ時代の流れを感じます。
いまとなっては全然共感できない街角描写ありますね。
信号が青になると「とおりゃんせ」が流れるとか、まるで「アドバルーン」みたいだな、とか。
今の子供が聞いたらぽかんとしそう。
ちなみにこれヒロインの台詞のひとつです。
衝撃的すぎて思わず椅子から転げ落ちそうになりました。
この現代の萌えゲーとの違いにキャッキャしながらプレイするのがおつですね。
こういうジェネレーションギャップにワクワクできるかが、楽しめるかどうかを分けるポイントと思います。
あとはそうですね。正直全体的に「よくわからない」作品ではあると思います。
プレイしてもらうと感じてもらえると思いますが、全体的にこう現実と虚構が交雑しながらストーリーが進んでいくので、ちょくちょく謎めいた表現が出てきます。
そしてそれを最後にしっかり回収するのかと言えばそうでもなくて、物語の核心を握る人物たちが抽象的で意味深なことしか話さず、最後も夢に溶けていくような終わり方をするため、結局詳細まではよくわかりませんでした。
難解と言うより読み手がいろいろ解釈できるよう、あえて余白を残して筆をおいてる感じですかね。
本作隠しルート的なものがあってそこで答え合わせがあるのかと思いきや、これ二次創作ですか?みたいなぶっ飛んだノリで突き抜けていきやがっのでよけいに困惑しました。
まあ全く意味不明ってことはなくて、こんな感じかなって推測はたつんですが、人によってはちょっとモヤモヤするかも。
この頃のPCゲームやラノベはこんな雰囲気のもが主流だった気もしますが。
②プロトタイプなヒロイン像
世界観で触れたように重厚感あるストーリーが魅力です。
今時の萌えゲーってキャラありきで、それを引き立てるためにストーリーを組まれているような作品も多いですが、本作はそうではなくてヒロインもいち登場人物でしかなく、各キャラがそれぞれ全体の物語を支える役割を担ってるって印象があります。
それに伴ってかわからりませんが、各ヒロインが何かすごいシンプルに感じました。いろいろ手を加えられてないというか。
ざっくり今回のヒロインの属性を言えば「ブラコン妹」、「天然ロリ」、「フランクな女友達」、「清楚なお嬢様」、「男勝りな姉貴」、「ミステリアス(電波)」みたいな感じなんですが、そのひと言でわりと全体像を表せてしまえるんですよね。
やっぱりエンタメのコンテンツってくり返し差別化が図られるので、何かしらの尖った個性が付与されていくものだと思います。
例えば万物美少女化計画が戦国武将から始まって、最近はアジアンフードまで至ったよに
ゆえにヒロインもどんどん先鋭化していきがちですが、本作のヒロインは素材そのままの味って感じでした。
魅力がないとかではなく、おそらく今のヒロインたちはここから派生していったのかな、みたいな印象を受けましたね。
③変わる一人称描写と変わらぬ恋愛描写
現代の萌えゲーって会話が物語の中心で、流れる日常の風景とか長々しい主人公のモノローグみたいな、掛け合いの発生しない部分はあまり描かれない気がします。キャラゲーとしての側面が強いというか、
でも本作は一人称視点も多いので悪く言えばちょっと退屈、良く言えば没入感が強い感じでした。世界観に浸れる感覚は強じかったです。
一方で恋愛に関する描写とかはあまり現代の萌えゲーと変わらないんですよね。
というか急に女の子に抱きつかれて主人公がドキドキする描写とか、ほぼ一緒でした。
こういうのはけっこう普遍的なものなのでしょうね。
まとめ
以上の3点が本作をプレイして感じたことです。私ははっきり言って面白いと感じました。
久しぶりになんかこうプレイ後も静かに心に響くような作品をプレイした気がしますね。
ただぶっちゃけこの動画を見ている諸兄にオススメできる作品かと聞かれれば、手放しで推せる1本ではない、ですね。
グラフィック面とか時代感の違いとかもありますが、何よりも現代の萌えゲーとは根底の方向性が違う感じがしました。
いまは萌えゲーに限らずいろんなエンタメがより手軽で、わかりやすく、かつインパクトのあるもの!・・・って感じに推移している気がしていて、それが悪いとは言いませんがそんな風潮とは逆行する作品だからです。
とくに日常的に新作をやってるとさらに違和感があるかなと。
ですが
ただヒロインが可愛いだけの物語が飽き飽きなんだよ!
もっと骨太な読ませるストーリーの萌えゲーやらせろやあ!
って過激派は何らかのかたちで入手してプレイしても決して損はないと思います。
とりあえず「ディアノイア」は名曲だから聞け!