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日向千尋は仕事が続かない 感想&レビュー動画
概要

2021年に「スミレ」より発売されたゲーム。
高校の頃同級生だった女友達とばったり再会したことから始まる、大人の恋愛を描いたラブコメ。
ライターはSMEEにて様々な作品のシナリオを担当していた早瀬ゆう氏が担当。ストーリー的に派手さはないものの心理描写が巧みで、恋愛小説を読んだような気分いなれる満足感のある作品です。コンプレックスを抱えてちょっと屈折している女性が好きなあなたに。
評価
- ストーリー : 7.5点
- ワードセンス : 8点
- キャラクター : 8点
- エロ&グラフィック : 7点
- その他 : 5点
総合評価:35.5点(50点満点)
あらすじ

社会人3年目でそこそこ仕事は順調なものの色恋沙汰にはさっぱりの主人公。それをネタに今日も上司や同僚にイジられていた。
しかしその場面を偶然高校の頃の同級生「日向千尋」に目撃されてしまう。バカにされるがままの主人公を微妙な目で見つめていた彼女は、帰りがけに信じられない提案をしてくる。
「私の部屋に寄っていかない?」と。
そんなこんなで一夜を共に過ごす二人だが、起き抜けに千尋は思いもよらぬことを言い出す。
「私、あんたの彼氏になるつもりはないから」と
そこから距離感が絶妙にこんがらがった二人の物語が始まる・・・といった内容です。
社会人同士のカップルの恋愛を描いたストーリーですね。ヒロインは一人だけのスタイル。途中でとくに話が分岐したりもしません。
キャラクター紹介
日向 千尋

ヒロインはもちろん「日向千尋」。他に固有名の付いたキャラクターは存在しません。
主人公とは高校からの同級生で、ここ最近は交流がなかったけど、当時はそこそこ仲が良かった女子。
明るくサバサバした性格で人当たりも良いけど、責任感の強さからか思ったことは口に出さずにいられない性分で、それが災いとなりトラブルを引き起こすこともしばしば。
一方で非常に繊細で臆病なところもあり、周囲に気を使いすぎて苦悩を抱えることも。
その相反するような性質を持ち合わせているが故か、ちょっと心が屈折しているところがあり、彼女のようなそうでないような、つかず離れずの微妙な距離感を維持されてしまって、主人公は最初の頃だいぶ振り回されます。
このジレンマにやきもきする感じが本作の肝のひとつとも言えそうです。
まあ現実の恋愛でも実際に恋人になるまでの、付き合うのか付き合わないのかの微妙な探り合いや鞘当てが、一番こう「恋愛」っぽい感じがあって楽しかったりしますが。知らんけど。
ともすればキツめな性格ともとれるけど、実際はわりかし乙女な性格で攻められると慌てたり照れたり、喜ぶところが可愛いです。これは生まれ持ったMの気質。
総合レビュー

ストーリー 7.5点
かつての同級生でお互いをかなり知り合っている、という設定ゆえにテンポはかなり良いです。展開的に初夜までもすぐ。
つかみが冒頭に用意されているのは物語に引き込まれやすいし良いと思います。
大枠としては現代の社会人同士の恋愛なので、突拍子のない展開もなくわりと平坦な日常が進んでいく感じです。
しかし主人公とヒロインのやり取りがいかにもフィクションって感じではなく地に足がついている感じで、身近な等身大の悩みを中心に描かれている感じが私的には好感触。
萌えゲーながらキャラの可愛さに頼り切った感じではなくしっかり恋愛を描いており、恋愛小説のような雰囲気が漂っています。
とはいえ重苦しい感じでもなく、そこそこの頻度でほのぼのギャグが絡むので読みやすい仕上がり。
大まかに2部構成になっていて、前半は幻のように追っては逃げて翻弄してくるとヒロインと付き合うまで。
後半はヒロインの抱える心のもろさと向き合っていく話になります。
付き合って終わりでなくて、もう一歩恋愛の果てにある幸福まで踏み込む。そのスタンスはかなりいいなと思いました。
派手さはないですが、多くの人が共感できそうなストーリーです。
ワードセンス 8点
かなーり心理描写がちゃんとしていて、ヒロインの抱える心の闇をすくいあげる描写が上手かったですね。
この辺りのヒロインの思いに共感しにくかったり、無理やりな解決がはかられると納得感に欠けたりするので。
自分を出すのが下手な故にから回って自爆するみたいな、わりと普遍的で多くの人に当てはまりそうな心の弱さや危うさ、その呪縛をほどく過程が丁寧に文章になっていて、恋愛だけにとどまらない人と人との絆までちゃんと書いているのは素晴らしかったです。

キャラクター 8点
シングルヒロインの萌えゲーだけあって、キャラクターもきっちり掘り下げられていました。
問題はこれほど明るくてノリの良い美人、しかも家事全般が得意で料理上手、なのに恋愛に初心という財宝がフリーって可能性は、この世界に35億の女子がいるとはいえ限りなくゼロに近いってことでしょうか・・・。現実は残酷なり。
ストーリー評価でもヒロインの心の悩みに触れましたが、ヒロインの日向千尋は魅力と言うよりコンプレックスを軸に造形されたキャラに思います。
それ故に可愛さ詰め合わせでは表現できない人間くさい魅力があるのがとても良いですね。
あと主人公が普通にイケメンでかっこいいのもわりと好ポイント。果敢にヒロインの心に飛び込んでいって、その全てを肯定する姿勢。
変に熱血だったり、勢い任せのボケをしたりしない普通の人なんだけど決めるとこは決めるという漢でした。
グラフィック&エロス 7点
どちらかと言えばストーリーに重きをおいているゲームだと思いますが、サービスシーンも手堅くまとまっています。
わりとこう夜のシーンがリアルめの描写だったなあというイメージ。
萌えゲーのほにゃほにゃシーンってだいたいこう誇張されがちですが、全体的にしっとりした文体というか声を押し殺す感じの描写だったりが、個人的に悪くなかったです。
ヒロインはわりとM属性なのも、こじらせぎみな性格とマッチしていてGOOD。
その他加点要素 5点
ストーリーはそれほどボリューム多くないですが、定価3,000円程度と考えると十分満足できるかと。
これといった問題点もない気がしますし、普段から恋愛小説やドラマ見るよって人には強く推奨できます。
評価
- ストーリー : 7.5点
- ワードセンス : 8点
- キャラクター : 8点
- エロ&グラフィック : 7点
- その他 : 5点
総合評価:35.5点(50点満点)