目次
ノラと皇女と野良猫ハート 感想&レビュー
概要
2016年に「HARUKAZE」より発売されたゲーム。
愛称は「ノラとと」。
翌年に発売された続編の「ノラと皇女と野良猫ハート2」は2017年の萌えゲーアワードの大賞を受賞。いまだにファンも多く伝説的萌えゲーの1本といっても差し支えない名作です。
物語としては冥界の皇女パトリシアと愉快な仲間たちが織りなす、抱腹絶倒のギャグあり、命がけのドラマありのファンタジー。アニメ化もしています。
評価
- ストーリー : 8.5点
- ワードセンス : 9点
- キャラクター : 8.5点
- エロ&グラフィック : 8点
- その他 : 6点
総合評価:40点(50点満点)
あらすじ
海沿いの街「桜ヶ淵市」に住む平凡な男子学生「ノラ」はある日、道端で倒れている女の子に出会う。
彼女の名は「パトリシア」見た目は可憐な少女だが、実はなんと死が支配する冥界から地上を滅ぼすためにやってきた皇女だったのだ。
その後のひょんな偶然や行き違いから「ノラ」は女の子とキスをすると猫になってしまう体質になってしまい、人と猫の狭間でドタバタのトラブルに巻き込まれていく・・・。
キャラ紹介
パトリシア・オブ・エンド
冥界の母の次女であり、次期の冥界を統べる者として期待されている存在。主人公を半人半猫にした張本人で、必然的にストーリー全般に関わることになるセンターヒロイン。
真面目で勉強家かつ子供好き。育ちが育ち故に価値観とか言動がぶっ飛んでるところがありますが、ちゃんと思いやりや女の子らしい恥じらいもあり、あくが強めな他キャラクターに比べてると天使属性と言っても差し支えなさそう。
物語の中心を担うだけに個別ルートはかなり長めかつしっかり作りこまれてます。
本来は地上を滅ぼすためにやってきたパトリシアが主人公と恋に落ち、多くの友人ができるなかでどう変わっていくのか。
恋愛要素もちゃんとあるんだけど、一方で日常の中では薄れがちな「生」と「死」もテーマの一つで、とくにワードセンスが光っているルートでした。主人公が猫になると設定を一番活かしてるように感じましたね。
とくに最後のノラとパトリシアの語らいは・・・(泣)
内容的にはハーバード白熱教室のファンで普段から高尚な哲学を嗜んでますみたいな人じゃなければ、素直に感動できるお話になってるんじゃないでしょうか。
やぱりパトリシアのルートが一番好きですね。
黒木未知
主人公の幼馴染で堅物の風紀委員。某トラブル系漫画を読んだことある人には「古手川唯」っていうとイメージ掴んでもらえるかも。
真面目で成績優秀な優等生・・・だけど全体的にちょっとずれてる感じがあるのが特徴。
厳格な家庭で育ったせいか恋愛下手で、思い込みの激しさから変な暴走したり、気を許した相手にはとことん甘えて独占したがったりします。
まあ要するに愛に飢えている系の女子。
その良くも悪くもヘビーな性格をを「可愛い」と思うか「メンドクサイ」と思うかで、キャラに愛を傾けられるかが変わってきそうですね。でもこの程度ならむしろ嬉しいと感じる人が多数派じゃないかなと思います。
可愛いとメンドクサイは根っこが同じとは持論です。
個別ルートの内容としては最初は空回り系ラブコメでくっついた後、後半は家族との確執みたいなものがテーマになってきて雰囲気は重め。いわゆる親の呪いってやつが描かれます。
鬱・・・とまではいかないまでも、人の心のドロドロした部分にも踏み込むからほのぼの恋愛を楽しみたい人だと「お?お?」って思うかもしれません。
ラスト付近もなかなか超展開でした。「え?そっち方面に行く?」みたいな。私は嫌いじゃないですが。
ただそれら物語の緩急を差し引いてもヒロインとしての魅力は十分あると思います。
夕莉シャチ
とある事情からノラと同じ家に家族同然の関係で暮らしている女の子。
グラビアアイドル顔負けのプロポーション。家事万能。常に理性的で穏やかな母性をもって主人公を支える、という男の理想を体現したようなキャラ。童貞を殺戮します。
人気投票でも何度か1位獲ってるみたいだし、ノラととヒロインのなかでもファンは多そうです。
ルート的には・・・ある意味一番衝撃を受けました。
実はシャチは冥界の皇女にも匹敵するようなとある設定を抱えているんですが・・・それを全然物語の本筋で使わないというまさかの展開。
まあその設定を活かした話もあるんですが、ぶっちゃけその部分をばっさり切ってもルートとしては破綻しないといいますか。
ラスト付近でこの設定に絡む何かしらの展開があると思い込んでので、突然EDっぽい1枚絵が出たときは思わず「え?」と言ってしまいました。
ただルートとして悪いかといったらそんなこともなかったですね。終盤に大立ち回りみたいなものがある他ルートと違って、軽めのひと悶着があってくっついた後はひたすらイチャイチャしてたら終わった・・・という印象です。
ある意味一番スタンダードなギャルゲーっぽいシナリオだったかも。
共通ルートや他の個別ルートではノラを諫めることの多いお姉さんポジションなんですが、個別に入ると主人公への恋心ゆえに謎の妄想で暴走したり、夜のプロレスシーンでは幼い口調で隠語を吐きながら乱れるというギャップがたまりません。
年上で巨乳のやさしいお姉さんとか最高ですよ。
明日原ユウキ
主人公の後輩で見た目も言動もまさにギャルって感じのキャラ。
主人公とは昔からの長い付き合いで何でも気安く話せる関係で、いくつものバイトを掛け持ちするアルバイトガールです。
素っ頓狂な言動をする他キャラをたしなめる突っ込み役の顔も持ち、実はめっちゃ気遣いもできるし考え方も良識的。
このゲームにおける良心の最後の砦とも言えるかも。
生来のノリの軽さから周囲にはビッチと思われてますが実は後ろめたい過去があって、本人もちょっと性格をこじらせているのが人物としてのポイントでしょうか。まあ裏も表もごりっごりのギャルっていうヒロインも逆に珍しいですが(オタクにやさしいギャルは神話の生き物です)。
個別ルートとしてはその心の闇に焦点を当てるのが物語の軸となります。そのため全編を通してじゃないですが暗めというか、ちょっとやるせない展開はありますね。
例えるならいつの世も一定数の悪意は世間に存在していて、ときには理不尽に振り回されることもあるけど仕方ないみたいな。
でもむっちゃダークってわけでもないですし、刺さる人も少なくないと思います。ノリいい系彼女とのちょっと小粋なエロトーク的な需要は十分満たしてますしね。
ルーシア・オブ・エンド ユウラシア・オブ・エンド
パトリシア姉と妹で、地上に遣わされたパトリシアを追って地上にやって来た同じく冥界の皇女。
ルーシアは妹煩悩で堅物、ユウラシアは天真爛漫な少女っていう感じですね。
本作では攻略対象ではないですが、パトリシアルートではストーリーにそれなりに関わりますし、Hシーンもあり。
2人とも続編の2では攻略ヒロインに格上げされます。
高田ノブチナ、井田、田中ちゃん
引用:©HARUKAZEノラの同級生かつ腐れ縁の幼馴染で、とくにノブチナと井田は昔からいろいろとやらかしてきた、悪友みたいなポジション。
サブキャラではあるものの非常に出番が多くて、ギャグパートでもシリアスパートでもがんがん物語をかき回します。
いわゆる主人公の友人ポジはギャルゲーにつきものですが、ここまで本筋に絡んでくるのは珍しいですね。個別ルートに入ると攻略対象以外のヒロインは出番が控えめになるのはあるあるですが、この二人は最後まで活躍します。
もしかするとトータルの台詞数では、メインヒロインより多いかも。会話回しを重視している「ノラとと」においては、屋台骨を支える存在と言えるのではないでしょうか。
田中ちゃんはノブチナと井田に比べると出番少ないけど、曲者ぞろいの登場人物を諫めたり仲裁したりする、癒し枠。続編ではけっこう重要な役を担います。
総合レビュー
ストーリー 8.5点
ギャルゲーってまあその作品の性質上、プールに行ったらウォータースライダーで水着の女の子と密着とか、ジュースを飲んだら間接キスでドキドキするとか。俗に言うお約束展開の積み重ねでできてることが多いわけでして。
それが悪いとは思いませんし、物語に妙なギミックや変化球を仕込みすぎるとそっちに意識を持っていかれるから、キャラゲーとしてよくないみたいな理屈もわかるんですが、どうしても次の展開を予測できがちなんですよね。あ、ここ進研ゼミで見たってやつです。
でもノラととはお約束をふまえつつもちょっと捻った展開も多くて、最後まで新鮮に楽しめて良かったです。
ワードセンス 9点 キャラクター 8.5点
ギャグもキレキレでワードセンスも秀逸です。とくにパトリシアと黒木未知ルートは世界観とキャラが合っていて非常に良かったかなと。
あと他の人のレビューでも書かれてましたが、パロディーとかネット民がよくこするネタとかが非常に少ないのは個人的に評価高いです。
パロが悪いってわけじゃないけど、あんまりやりすぎると身内ノリ感が強くなって興ざめな気がしてしまうので・・・。
エロ、グラフィック 8点
Hシーンは各キャラ4~7回。パトリシアだけルーシアとユウラシアと絡むから、ちょっと多め。いわゆる3Pですね。
内容はかなりスタンダードであんまりマニアックなプレイとかはしません。グラフィックも可愛いさといやらしさを両立している感じで、万人受けする絵柄に思います。ところどころCGの絵柄のテイストが変わったのだけ気になりましたが、マイナスにするほどではないかなーと。
その他加点要素 6点
キャラ同士が常に漫才がごとくテンポの良い掛け合いを繰り広げていて、その独特なラブ&コメディーの世界観はくせになる人も多いと思います。
でも実際は出てくる大人や上級生がわりと軒並みクズで、大人に逆らえない子供の切なさみたいなのも描かれるので、終始明るいラブコメって感じでもないですね。むしろテーマとしては重めです。
とはいえギャグパートが随所にあってシリアスに傾きすぎないよう調整がされてるので、気軽に楽しめる作品である点は間違いありません。
一方でその場面の状況や心理もようがそこまで詳しく描かれていない部分がちょこちょこありまして、そこは賛否があるかもです。会話とノリの勢い重視で突き抜けていってるというか。
納得できないほどではないんですが「え?何でその行動選ぶの?何か他にやりようなかったの?」みたいに思った場面もありました。
あと所々に天の声みたいなナレーションが入って場面を説明するのがこのゲームのユニークな点ですが、そこも好き嫌いが分かれているようです。私はあまり気になりませんでしたが。最後までプレイすれば演出の狙いもわかりますし。
加えて山場で挿入される音楽が素晴らしいですね。ぐっとこう感動を増幅させてくれる感じがしました。とくにパトリシアルートの「月」とか。
いろいろ言いましたが突き抜けるようなノリの良さについていけて、細かいツッコミどころを気にせず読めるなら、名作判定する人は多そうに思います。コミカル成分と感動要素がバランスよくまとまっていて、ラブコメ好きにはとくにおすすめ。ギャルゲー初心者にも十分推せる一本です。
評価
- ストーリー : 8.5点
- ワードセンス : 9点
- キャラクター : 8.5点
- エロ&グラフィック : 8点
- その他 : 6点
総合評価:40点(50点満点)
[…] 詳細解説ページ 作品概要/体験版DL […]